オンプレミス(on-premises)の意味は、サーバーやソフトウェアなど情報を管理するシステムを自社内に設置し運用することです。
もう少し詳しく説明すると、情報を管理するためのシステムを自社で使いやすいように設計し、機器を調達、構築し運用することです。自社向けに設計するためカスタマイズの自由度が高いのはもちろんのこと、セキュリティを強化することができ大切な情報を厳重に管理できます。
しかし、オンプレミスには導入コストがかさむ、専門的な技術者が必要といったデメリットもあり、本当に自社に合っている情報管理方法なのかじっくりと検討する必要があります。
そこでこの記事では
◎オンプレミスの意味
◎オンプレミスの4つのメリット
◎オンプレミスの3つのデメリット
◎クラウド(オフプレミス)との比較
◎オンプレミスを選ぶべきケース
◎ハイブリットクラウドが登場している
をまとめてご紹介します。最後まで読めばオンプレミスとはどのようなものなのか把握でき、自社に合うかどうかを検できるようになるはずです。
情報管理システムは一度構築すると、簡単に移行できません。だからこそ、自社に合う納得のいくシステムを選んでみましょう。
目次
1. オンプレミスの意味は?
冒頭でも説明したようにオンプレミス(on-premises)とは、サーバーやソフトウェアなど情報を管理するシステムを自社内に設置し運用することです。「自社運用」や「オンプレ」と呼ばれることもあります。
プレミスには「構内」や「店内」という意味があり、自社の建物内に情報管理システムを設置することを指しています。オンプレミスには下記の3つの運用方法があります。
種類 | 特徴 |
従来型オンプレミス | 自社でサーバーやソフトウェアを調達し、自社内に設置して運用する |
ハウジング | 自社でサーバーやソフトウェアを調達し構築。他社が提供するサーバーセンターで運用する |
ホスティング | 他社が提供するサーバーやソフトウェアでシステムを構築し、他社が提供するサーバーセンターで運用する |
従来型オンプレミスやハウジングでは情報管理に必要なサーバーやソフトウェアを自社で調達し、構築や設定まで行います。近年は社内にサーバーを設置するスペースがない企業も増えており、社外のサーバーセンターに設置をするハウジングが誕生しました。
ホスティングは利用者の要望を聞きながら他社がシステム構築を行い、外部のサーバーセンターで運用する方法です。社内に情報システムの構築ができる人がいない場合や自社ですべてを行う手間をかけたくない場合に向いています。
オンプレミスは自由に構築できるため柔軟なカスタマイズがしやすく、職種や用途に合わせて必要な機能や容量を確保できるところがポイントです。また、自社で運用するためセキュリティ対策がしやすく、大切な情報を守れるという一面も持っています。
2000年代初頭までは多くの企業がオンプレミスを導入していましたが、情報管理のクラウド化やクラウドサービスの多様化によって利用者が減少している傾向にあります。一方で、オンプレミスならではのメリットが再考され始めており、オンプレミスを再検討するという動きも出始めています。
2.オンプレミスの4つのメリット
オンプレミスのメリットとしては
・カスタマイズの自由度が高い
・セキュリティを強化することができ、安全性が高い
・既にあるシステムを連携できる
・外部環境に左右されず安定した運用ができる
という4つがあります。どのようなところが強みとなっているのか、ぜひチェックしてみてください。
2-1.カスタマイズの自由度が高い
オンプレミスの最大のメリットは、自社に必要な性能を自由にカスタマイズできるところです。情報管理システムの選定から構築、設定まですべて自社で行うので使いやすいように細かな設定ができます。
例えば
・管理したい情報の量が多く容量を増やしたい
・社内の情報を一括して管理できるようにしたい
・情報通信速度をあげたい
・セキュリティ対策を強化したい
という場合でも、課題を解決できるようなソフトウェアやシステムを選び柔軟な対応が可能です。クラウドサービスで同じような環境を実現しようとするといくつものサービスを使い分ける必要があり、業務が複雑化するだけでなく余分なコストがかかってしまうことが起きているようです。
その点、オンプレミスはコストを決めて自分たちが使いやすいよう自由に構築していけるので、満足感が高い情報システムとなるでしょう。
2-2.安全性が高い
オンプレミスはインターネット環境も自由に構築できるため、セキュリティを強化し安全性が高いシステムが作れます。
社員のみしか利用できないプライベートなインターネット接続やローカル接続を採用すれば第三者が介入しにくく、情報漏えいやウイルス感染のリスクを軽減できるでしょう。
また、クラウドサービスなどとは異なり自社判断で最新のセキュリティソフトを導入することも可能なので、常に一定水準のセキュリティ環境を維持しやすくなります。
そのため、機密情報を扱っている業種や個人情報や企業情報を多数扱っている業種では、オンプレミスが選ばれる傾向があります。
2-3.既存のシステムを連携できる
オンプレミスは、既存のシステムと連携させることができシステム変更の手間や管理の複雑化を防げるところもメリットです。
例えば、既に物流管理システムや勤怠管理システムがある場合、オンプレミスと連携させてそのまま使用し続けることができます。いくつものシステムやクラウドサービスを併用していると管理が複雑し使いにくくなりますが、オンプレミスではそれを回避でき業務効率化が叶います。
また、既存のシステムと連携させて管理を1本化することで、トラブルが発生したときに対応しやすくなりトラブル解消までの時間が短縮できます。
2-4.安定した運用ができる
オンプレミスは自社で運用しているため、外部のトラブルに巻き込まれることがありません。
クラウドや外部サービスを利用している場合は、システム障害や思わぬトラブルが発生すると一時的に利用できなくなり業務に支障が出てしまいます。情報管理システムは企業の根幹となる部分なので、安定した運用ができないと不安を感じるはずです。
また、オンプレミスは運用を開始し改善点が見つかった場合に、迅速な対応ができ改良を重ねていけるところも特徴です。
クラウドサービスや外部サービスは利用してみて「欲しい機能が見つかった」「使いやすさを改善したい」と思っても、用意されている機能内でしかカスタマイズできません。
このように、オンプレミスは外部環境に左右されず自由に改良を重ねていけるため、長い目で見ても安定した運用ができると言えるでしょう。
3.オンプレミスのデメリット
オンプレミスのメリットが把握できたところで、デメリットとしてはどのようなことが考えられるのでしょうか?
ここでは
・導入コストや運用コストが高い
・システムの構築に時間がかかるため、すぐに導入することが難しい
・社内にトラブルに対応できる技術者が必要
・資産管理を自社で行う必要がある
という4つのデメリットをご紹介します。
3-1.コストが高い
オンプレミスは、自社で必要な部材の購入やレンタルから構築、運用までしなければならないためコストがかかります。下記の表は、従来型オンプレミスやハウジング、ホスティングで必要なコストを一覧にしたものです。
機材の購入・レンタル費 | システム構築費 | サーバー設置費 | サーバー運用費 | |
従来型オンプレミス | 〇 | △ | 不要 | 不要 |
ハウジング | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
ホスティング | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
どの方法でも、初期費用として自社に必要な機材やソフトウェアの購入、レンタル費がかかります。それに加えて、外部の専門家にシステム構築を依頼する場合にはシステム構築費が必要です。
また、ハウジングやホスティングのように外部施設にサーバーを設置する場合は、設置費用と運用費もかかるため、コストがかさむのが分かるでしょう。
具体的な導入コストは設備によって大きく異なるため一概には言えませんが、数百万かかることも少なくありません。
仮に
サーバー1台:30万円
周辺機器:30万円(ルーターやSPUなど)
ソフトウェア:10万円
だったとすると、これだけでオンプレミスの導入時に70万円がかかります。クラウドサービスなどは低価格帯のサービスや月額サービスも出ているため、比較をすると高く感じられるところはデメリットだと言えるでしょう。
3-2.システム構築に時間がかかる
オンプレミスは運用開始までに時間がかかるため、すぐに利用が開始できるわけではありません。オンプレミスの種類により、下記のようにシステム設計や機器の発注、構築に時間を要します。
オンプレミスの導入までにかかる時間 | |
従来型オンプレミス | システム設計や機器の選定、機器の発注と構築という手順を踏むので数ヶ月必要 |
ハウジング | システム設計や機器の選定、機器の発注と構築という手順を踏むので数ヶ月必要(サーバーの設置場所によっては、従来型オンプレミスより時間がかかる) |
ホスティング | ある程度外枠のあるリース内容や機器から選定し他社で構築するので、他の2つよりは短期間で導入できる |
従来型オンプレミスやハウジングはオンプレミスの設計や機器の選定、構築をすべて自社で行うことが多いため数ヶ月程度時間がかかってしまいます。
ホスティングの場合はある程度限られた条件の中から他社が設計や構築をするため、自社で行うよりは時間がかからないでしょう。
クラウドサービスなどの外部サービスのように申し込みをするだけで利用きるため、運用開始までに時間がかかるということは注意したいポイントです。
3-3.社内にトラブルに対応できる技術者が必要
オンプレミスは万が一トラブルが発生した場合やシステム障害が起こったときに、自社で解決しなければなりません。(ホスティングの場合は責任範囲を分けることがあります)
トラブルに対する備えができていないと、復旧まで時間がかかったり被害が拡散してしまったりする可能性があります。そのため、
・トラブルに対応できる技術者が常駐している
・外部の保守点検サービスを利用する
・外部の24時間監視サービスを利用する
といった対応が必要です。自社にトラブル対応ができる専門的な技術者がいない場合は外部サービスに頼る必要があるので、一段とコストがかさんでしまいます。
自由にカスタマイズでき自社運用ができる分、保守点検も自社責任となるため意外と負担がかかるというのはデメリットだと言えるでしょう。
3-4. 資産管理を自社で行う必要がある
オンプレミスは、購入後に資産管理を自社で行う必要があります。購入したハードウェア、ソフトウェアが「資産」扱いとなり、減価償却(*)が必要になるため、経理上の手間がかかるということを覚えておきましょう。
*減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する資産を取得した際に、取得するための支払額をその耐用年数に応じて費用計上していく会計処理のことを指します。
4.対になる「クラウド(オフプレミス)」との違い
ここからは、オンプレミスと比較されることが多いクラウド(オフプレミス)についてご紹介します。
クラウドの意味やクラウドとオンプレミスの比較をまとめたので、オンプレミスとの違いが気になる場合はぜひチェックしてみてください。
4-1.そもそもクラウドとは?
クラウド(クラウドコンピューティング) とは、データやソフトウェアをインターネット経由で提供する仕組みです。オンプレミスの対義語として「オフプレミス」と呼ばれることもあります。
パソコンにソフトウェアをダウンロードしたり専用のサーバーを接続したりしなくても、クラウドサービスを利用すればネットワーク上で簡単に情報の管理ができます。
クラウドには「雲」という意味がありますが、まさにパソコンの上で雲のようにふわふわと浮いているデータやサービスを引っ張り出して利用するというイメージです。
クラウドはデータを管理する場所や機器が必要なく、対応しているパソコンやスマートフォンなどの端末があればどこからでもアクセスできるところが特徴です。
・導入しやすく導入コストや運用コストが抑えられる
・IaaSやSaaSなど多彩なクラウドサービスが提供されるようになってきた
というところから導入する企業が増えています。
4-2.オンプレミスとクラウドの比較一覧
ここでは、オンプレミスとクラウドの性能を比較し一覧表にまとめてみました。カスタマイズ性やセキュリティなどよく比較される6つの項目で比較すると、下記のようになります。
両者にどのような違いがあるのか、項目ごとにチェックしていきましょう。
4-2-1.カスタマイズの自由度は「オンプレミス」
第1章でもご紹介したとおり、オンプレミスは自社の欲しい性能に合わせてソフトウェアやサーバーなどを選び自由に構築できるところが最大の強みです。
一方でクラウドはサービスによってカスタマイズできる範囲が限定されており、オンプレミスのような完全オリジナルの環境を構築することは難しいです。あくまでもサービス提供者が主体なので、提供されているサービスから検討する必要があります。
このように、情報を管理するシステムの自由度や自社に合った性能など柔軟な設計をしたい場合は、オンプレミスに軍配があがります。
4-2-2.コストは「クラウド」のほうが安くなるケースが多い
コスト面でオンプレミスとクラウドを比較した場合、企業規模やシステム内容により大きな差があるため一概には言えませんがクラウドのほうが安くなるケースが多いです。
クラウドはオンプレミスの移行や既にあるシステムと連携させるなど特別なことをしない限り、初期費用が抑えられます。また、保守点検やセキュリティ対策なども含めた月額料金制となっている場合が多く、月額料金以外に余分な費用が発生しにくいです。
一方で、オンプレミスは第3章でも述べたように初期費用が高くなる傾向があります。導入方法によっては初期費用以外にもサーバー運用費や保守点検費がかかるため、初期費用にプラスして毎月コンスタントに費用が発生することになります。
しかし、ある程度初期費用をかけて満足のいくシステムを構築し社内スタッフで運用していく場合は、オンプレミスのほうが安く済む可能性があります。
例えば、オンプレミスのシステムを100万円で導入しその後のメンテナンス費用はかからないとします。毎月5万円かかるクラウドと比較すると20ヶ月で100万円が精算できることになるのです。
このように、基本的にはクラウドのほうが安くなるケースが多いですが、長い目でみると運用次第でオンプレミスのほうが得をする可能性もあります。
4-2-3.導入スピードは「クラウド」のほうが早い
導入するスピードは、クラウドのほうが圧倒的に早いです。オンプレミスからの移行や他のシステムとの連携など特別なことをしない限り、オンライン上で必要な登録をすればすぐに利用できるようになります。
オンプレミスの場合は方法にもよりますが、システム設計や機器の選定、機器の発注と構築という手順を踏むので数ヶ月ほど必要です。システムを導入する手間や時間を重視する場合は、クラウドのほうが簡単に導入できるでしょう。
4-2-4.災害対策はどのような対策を取り入れているのかで決まる
オンプレミスとクラウドのどちらを選択しても、どれくらい災害対策を重視するのかによって対策できる範囲が大きく異なります。
クラウドの場合、災害対策は「「SLA(Service Level Agreement)」の中に記載されています。SLAとはサービス品質保証という意味で、利用しているクラウドサービスがどのような災害対策や保証を取り入れているのか把握できるようになっています。
SLAの内容はサービスにより異なり停電や火事が起きたときのデータの保証やバックアップ制度などが記載されているため、事前に確認するようにしましょう。
一方、オンプレミスの場合は自社で災害対策をする必要があります。災害対策サービスに加入したり定期的なデータのバックアップを実施したりすることで、災害時のリスクを軽減できます。
4-2-5.セキュリティ対策は「オンプレミス」のほうが強化できる
ウイルス感染防止や情報漏えいを防ぐセキュリティ対策は、オンプレミスのほうが強化できます。
オンプレミスは自由に設計できるため組み込みたいセキュリティ対策を自由に導入できるのはもちろんのこと、不特定多数の人が利用できるインターネット回線を利用しないローカル接続を採用すれば大切なデータのやり取りを保護することが可能です。
一方、クラウドの場合はサービスが提供している範囲内でしかセキュリティ対策ができないので、どのサービスでも満足のいくセキュリティ対策が用意されているとは限りません。
重要なデータを管理したい場合や情報漏えいやウイルス感染リスクができるだけ抑えたい場合は、オンプレミスが向いています。
4-2-6.障害対応はどちらもメリットとデメリットがある
通信障害やシステムエラーが発生した場合、オンプレミスとクラウドでは対応が大きく異なります。クラウドの場合はサービス提供者が障害対応を行うため、どれくらい時間がかかるのか随時情報を確認しながら対応を待たなければなりません。
また、不特定多数の人が利用するサービスなのでオンプレミスに比べると障害が発生しやすい側面もあります。
一方でオンプレミスは外部に保守管理を依頼していない限り、自社対応となります。リアルタイムで状況が把握できるため、社内との連携が取りやすく混乱が起きにくいところがメリットです。
しかし、自社で解決できない障害が発生した場合は復旧までに時間がかかってしまい、業務に影響を及ぼすでしょう。
このように、オンプレミスとクラウドの障害対応はそれぞれ異なるメリットとデメリットがあるため、一概にどちらが優れているとは言い難いです。
5.オンプレミスを選ぶべき4つのケース
オンプレミスとクラウドの違いが把握できたところで、オンプレミスを選ぶべき
・社内秘の機密情報を守りたい場合
・優れた技術者が常駐している場合
・24時間365日一定のパフォーマンスを維持したい場合
・必要な情報の管理をまとめて行いたい場合
という4つのケースをご紹介します。どのようなところがオンプレミスに向いているのか、ぜひチェックしてみてください。
5-1.社内秘の機密情報を守りたい場合
オンプレミスはシステム設計や機器の選定、構築を自由にできるため、セキュリティ対策を強化しようと思えばいくらでも強化できます。
クラウドサービスの場合はサービス提供者が用意している範囲でしかセキュリティ対策ができないため、どれだけセキュリティを強化しても上限があります。
オンプレミスを使えば
・ローカル接続を採用し、プライベートなインターネット接続で情報の送受信をする
・最新のセキュリティ対策ソフトウェアを採用する
・多要素認証を採用して、簡単にハッキングできないようにする
・サーバーの管理室や管理施設のセキュリティを強化する
など、さまざま方法を取り入れて大切な情報を外部から守り管理することが可能です。
そのため
・多量の個人情報や企業情報を管理している
・社外に流出させてはいけない社内秘の情報を扱っている
・情報流出をすると企業の信用問題に関わる情報を管理している
という場合にオンプレミスを選ぶのがおすすめです。
5-2.優れた技術者が常駐している場合
オンプレミスは、サーバーやソフトウェアなどのシステム管理機器を自社で保守管理していかなければなりません。
社内やサーバーセンターに優れた技術者や管理者が常駐している場合は安心して任せることができるのはもちろんのこと、障害発生時にもいち早く対応できて業務への影響や大切な情報へのダメージを最小限に抑えることができるでしょう。
また、システムの見直しや改善をしたい場合にも社内に技術者がいれば手軽に相談でき、改良を重ねて利用しやすいシステムにしていくことが可能です。
社内で保守管理がすることが難しい場合は外注や外部サービスに依頼する方法がありますが、毎月費用が発生しランニングコストがかかります。
オンプレミスは自社運用とも呼ばれていますが、自社の長い間安定して運用できるかどうかが大きなカギとなります。オンプレミスを運用できる環境が整っている場合は、検討してみてもいいかもしれません。
5-3.24時間365日一定のパフォーマンスを維持したい場合
業務に支障が出るような通信障害やシステム障害を避けたい場合にも、オンプレミスは向いています。オンプレミスは外部サービスに依頼しない限り自社で保守管理をするので、障害が発生するような原因を起こさなければリスクを軽減できます。
一方でクラウドサービスは不特定多数の人が利用するのはもちろんのことデータやソフトウェアをインターネット経由で管理するため、社外要因で障害が発生する可能性があります。
実際にクラウドサービスのMicrosoft「Office365」では2019年11月20日午前に障害が発生し、完全復旧が夜となる障害が発生しました。原因が分からずに障害の範囲を確認するのにも、時間がかかったようです。
このような急な障害をできるだけ避けたいという場合は、自社で運用できるオンプレミスを選んだほうがいいでしょう。
参考:日本経済新聞「Microsoft「Office365」で再び障害」
5-4.必要な情報の管理を一括で行いたい場合
オンプレミスは
・既存のシステムと連携をさせることができる
・自社で必要な性能や機能に合わせて設計、構築ができる
というメリットがあるので、システムの複雑化を防いで一括で管理ができるようになります。
クラウドの場合は備わっている機能が決まっているため、場合によってはいくつものサービスを併用する必要があります。「あれもこれも管理しなければならない」と業務の複雑化を招くだけでなく、利用するサービスが増えることでコストやリスクも膨らむでしょう。
情報を管理するシステムは長い間利用していくことになるので、自社で管理しやすいように予め創意工夫ができます。
いくつものシステムを併用している場合や管理したい情報が多岐に渡る場合は、オンプレミスを検討してみるのも一つの方法です。
6.クラウドとオンプレミスを組み合わせた「ハイブリットクラウド」が登場している
「ハイブリッドクラウド」とは、クラウドサービスと自社のオンプレミスを組み合わせて両方利用することです。
オンプレミスに連携できるクラウドサービスを利用することで、両者を併用できます。第4章でご紹介したようにオンプレミスとクラウドの強みは異なるので、上手に使い分けることで両者のいいところを活かせます。
例えば
・重要度の高い情報をオンプレミスで管理しその他の情報をクラウド管理にすることで、オンプレミスサーバーの負荷を軽減する
・流動性がある情報はクラウドで管理し、機密性の高い情報をオンプレミスで管理する
・災害対策でクラウドとオンプレミスの両方で重要なデータを管理する
など目的や情報の重要度に合わせて使い分けることが可能です。
上手く併用すれば
・機密性の高い情報のセキュリティ強化
・障害や災害時にも強いネットワークシステムの構築
・情報の管理にかかるコストの削減
が見込めるでしょう。クラウドとオンプレミスのどちらにも必要性や魅力を感じている場合は、併用してみることも一つの手段です。
7.まとめ
いかがでしたか?
オンプレミスの意味やメリット、デメリットが把握でき、オンプレミスを選ぶべきかどうか検討できるようになったかと思います。
最後にこの記事の内容をまとめてみると
◎オンプレミス(on-premises)の意味とは、サーバーやソフトウェアなどの情報を管理するシステムを自社内に設置し運用すること。
オンプレミスには、下記の3つの種類がある。
種類 | 特徴 |
従来型オンプレミス | 自社でサーバーやソフトウェアを調達し、自社内に設置して運用する |
ハウジング | 自社でサーバーやソフトウェアを調達し構築。他社が提供するサーバーセンターで運用する |
ホスティング | 他社が提供するサーバーやソフトウェアでシステムを構築し、他社が提供するサーバーセンターで運用する |
◎オンプレミスのメリットは次の4つ
1)自社で設計や構築、運用を行うためカスタマイズの自由度が高い
2)ローカル接続などセキュリティを強化することができ、安全性が高い
3)既にあるシステムを連携できる
4)外部環境に左右されず安定した運用ができる
◎オンプレミスのデメリットは次の3つ
1)自社で構築をするため、導入コストや運用コストが高い
2)システムの設計や構築に時間がかかり、すぐに導入することが難しい
3)社内にトラブルに対応できる技術者が必要
◎オンプレミスと比較されるクラウド(クラウドコンピューティング) とは、データやソフトウェアをインターネット経由で提供する仕組み。オンプレミスの対義語として「オフプレミス」と呼ばれることもある。
◎オンプレミスとクラウドの比較一覧は下記のとおり
オンプレミス | クラウド | |||
カスタマイズ | 〇 | 自由に構築できる | × | 提供されているサービス内でしかカスタマイズできない |
コスト | △ | 初期費用がかさむ | 〇 | 導入コストやランニングコストが安い |
導入スピード | × | 時間がかかる | 〇 | すぐに利用できる |
災害対策 | △ | 自分で行う必要がある | △ | サービスにより異なる |
セキュリティ | 〇 | ローカル接続など自由に設定可能 | △ | サービスにより異なる |
障害対応 | △ | 自分で行う必要がある | △ | サービスにより異なる |
◎オンプレミスを選ぶべきケースは次の4つ
1)セキュリティを強化して、社内秘の機密情報を守りたい場合
2)トラブルに対応できる優れた技術者が常駐している場合
3)外部環境に左右されず24時間365日一定のパフォーマンスを維持したい場合
4)必要な情報の管理をまとめて行いたい場合
◎クラウドサービスと自社のオンプレミスを組み合わせて両方利用する「ハイブリッドクラウド」も登場している
この記事をもとに、自社に合う情報管理システムを検討できるようになることを願っています。
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