自社は脱クラウドすべき?企業がオンプレ回帰至る本質的な要因と解決策

海外発の「オンプレミス回帰」というキーワードが聞かれるようになりました。

これは、クラウドにシフトした結果、逆にオンプレミス環境にメリットが多いこともあり、オンプレミスの環境に戻すことを言います。

「オンプレミス回帰」という言葉は、日本企業のシステム担当者にクラウド導入関して、間違った認識を生じさせるかもしれません。あくまで、回帰という点が重要です。

日本企業のクラウド環境の導入は、海外に比べて遅れていると言われています。あなたの会社では、システムをクラウドへ移行して、普段からクラウドを活用されていますか?

昨年、新型コロナによる影響で、多くの日本企業のリモートワーク対応の準備ができていなかったことが露呈しました。クラウド環境の導入が普及していない現れでもあり、最近では、多くの企業がクラウド利用へシフトし始めている状況ではないでしょうか。

「オンプレミス回帰」は、実際にクラウド活用を知ったあとに起きる事象と考えるのが正しい捉えかたです。

その背景と理由、その先にあるシステム利用の姿に関しても、独自に考察していこうと思います。

1. オンプレミス回帰とは

オンプレミス回帰とは、パブリッククラウド上にあるアプリケーションやデータを、オンプレミスに移行するプロセスのことをいいます。また、ここでいうオンプレミスは、自社運用することを意味しています。 パブリッククラウドとオンプレミス

企業・組織によって理由は様々ですが、オンプレミス回帰の背景として、クラウド移行後に想定以上のコストになった、ネットワークや仮想マシンのパフォーマンスが悪くなる等、見直しの必要に迫られることがきっかけのようです。

2. オンプレミス回帰のきっかけとなる、パブリッククラウド利用での4つのデメリット

パブリッククラウドへ移行後に、あらためて気が付くデメリットは以下の4つになります。

・全体の運用コストが把握しづらい
・パフォーマンスの低下
・堅牢なセキュリティ構築に限界がある
・自社の障害対応ノウハウを蓄積しにくい

以下、詳細を見ていきましょう。

2-1. 全体の運用コストが把握しづらい 

オンプレミスでのハードウェア調達や設定費用等と比較して、クラウド上でのコンピューティングリソースやストレージ利用はとても安く見えますが、同時に、時間単位、日・週単位での利用料や、各仮想コンピューティングの要望に対応するための多種多様な追加設定メニューを提供しています。構成によっては利用結果での請求を見ないとわからないケースもあり、運用にかかる総コストが把握しづらくなることあります。

例えば、データ容量の大きなストレージをクラウドへ移行した場合などは、想定していたよりもコスト高になる可能性が上げられます。ストレージ容量が単純に増えるだけの課金だけでは済まず、場合によっては必要なアプリケーション、セキュリティ設定、ネットワーク環境などの要素も考慮する必要がある場合もあり、追加費用が増加して結果的に割高になってしまう可能性があります。

これらの要素が、クラウドサービスの課金体系の分かりづらさにも関係しています。

2-2. パフォーマンスの低下

クラウド上では、仮想マシンを設定して利用しますが、仮想マシンの設定やネットワークの帯域設定等で、パフォーマンスが従来のオンプレミスよりも遅くなる場合があります。例えば、バックアップとリカバリーをパブリッククラウド環境で導入したが、想定した以上に時間やデータ量が多く、オンプレミス環境のほうが割安で早くリカバリーするケースなどがあげられます。

大容量のデータ転送を早く行いたい場合でも、仮想マシンの構成やネットワーク帯域設定は、パブリッククラウド上で定義されているメニューを選択して構成を組むことはできますが、設定を個別に調整することは難しいためです。

2-3. 堅牢なセキュリティ構築に限界がある  

パブリッククラウドでは、セキュリティに関する責任共有モデル*を掲げています。サービスを提供する側は、提供するインフラレベルのセキュリティに責任をとりますが、その上に構築するサーバーやOS等は、ユーザー自身の責任でセキュリティを担保しなければなりません。

ユーザーは、提供されているサービス側で、もしセキュリティインシデント等が発生した場合でも、状況を把握することは難しいですし、復旧するまで待つしかありません。

また、クラウド上で複数のアプリケーションを運用していたとしても、セキュリティ要件の観点から場合によっては、ハードウェアレベルに近いレベルの詳細な監視やコントロールが必要とされる場合があります。監視やコントロールのために、アクセス解析など煩雑で時間のかかる作業が発生するため、結果的に、自社のデータセンターでの運用に切り替える場合があります。

政府や業界による規制等も1つの要因です。コンプライアンスを確保するために、クリティカルなデータを運用するアプリケーション等は、結果的にオンプレミスの運用に切り替えたほうが安全と判断する場合もあります。

* 責任共有モデルとは
ホスト側が提供するサービス、ホストOSから、サービスが運用されている物理施設のセキュリティまでは提供者の責任、ホスト上で利用するOSやアプリケーション等はユーザー側の責任というモデルです。

2-4. 自社の障害対応ノウハウを蓄積しにくい

非常にクリティカルな業務アプリケーションの場合、安定稼働や安定運用だけでなく、障害が発生した際の対応力も重要です。障害対応ノウハウは、経験則によるところも多く、そのノウハウの蓄積は、その企業の信頼性や実力に関わる重要な要素です。この観点でみると、パブリッククラウド上で運用する場合、提供されているインフラ上でシステムを稼働させていることから、原因分析やトラブルシューティングのプロセスなど、自分達でコントロールできる範囲が不十分な可能性があり、障害対応のノウハウ蓄積は限定的になります。その場合、自社のデータセンター等オンプレミス環境での運用に戻すことになります。

3. オンプレミス回帰の事例 

オンプレミス運用に切り替えた3つ事例を紹介します。
これらの事例のシステムには、以下3つの共通要素があります。

・自社ビジネスに直結する重要なシステム
・大量のデータを扱っている
・クラウド上のトラフィックが多い

共通要素は、結果的にオンプレミスのほうがコスト削減や自社運用ノウハウも蓄積できるようになるポイントと考えられます。自社運用の切り替えのメリットを享受できるヒントになるかもしれません。

では、詳細を見ていきましょう。

3-1. DropBox 

クラウドストレージサービスの「Dropbox」は、2015年にAmazon Web Servicesのクラウドストレージ Amazon  S3 から、オンプレミスのデータセンターにあるストレージシステムに、ほぼ全てのデータを移行しました。初期段階からクラウドとオンプレミスを使い分けるハイブリットクラウド構成前提で運用をしていたようで、自社システムが準備できた段階で、サービスの中心をオンプレミスに移行しました。ただし、完全にオンプレミスのストレージシステムだけの運用に変えたわけではなく、必要に応じてAWSの同名クラウドサービス群も利用しています。

自社のサービスの根幹に係る部分だけに、自社運用で、きめ細かくパフォーマンスやノウハウを蓄積する必要がありました。

オンプレ回帰に至った要因1: コスト
増加するデータ量のコスト削減から、オンプレミスのデータセンターへの移行を行った。

オンプレ回帰に至った要因2: 自社ノウハウの蓄積
自社サービスの成長と、ニーズに合わせたストレージシステムの構築

事例詳細はこちら 

3-2. ひかりTV 

映像配信サービス「ひかりTV」を提供するNTTぷららは、「Azure Blob Storage」で管理していた約22億ファイルをオンプレミスに移行しました。

オンプレ回帰に至った要因1: コスト
クラウド上のデータを、外部の環境に送信する際は料金が発生するため、これがコストを押し上げる要因となっていた。

オンプレ回帰に至った要因2: 運用管理の質の低下 
クラウドサービスはインフラの運用管理をクラウドベンダーに任せることになるため、何か問題が発生した際に、その原因を自分たちで特定して改善につなげることができず、サービスの品質低下を招く不安材料となっていた。

事例詳細はこちら 

3-3. パルマッツ・ヴィンヤード

アメリカ、ナパヴァレーにあるワイナリー、パルマッツ・ヴィンヤードは、自社開発した発酵監視システムをクラウドに移行、その後オンプレミスに戻しました。

一般的にワイン醸造では手作業で何度もサンプルを採取し、発酵タンク内に十分な酸素と栄養があることや、温度と酸化レベルが適切に保たれていることなどを確認する必要があります。このワイナリーでは、それをシステム化し、ワイナリーが保有する発酵タンク内の状態を監視し、調整の必要があれば醸造担当者に通知するシステムを開発して導入しています。最初は、オンプレミス環境での稼働でしたが、データ容量が増大するにつれ、オンプレミスのハードウェアで限界があり、パブリッククラウドのストレージサービスへ保管できるようにシステムを拡張しました。

オンプレ回帰に至った要因1: コスト 
増加するデータ量と、クラウド上のデータを取り出す際の料金が問題になった

オンプレ回帰に至った要因2: ネットワーク遅延 
発酵プロセスでは正確に時間を管理する必要があり、パブリッククラウドからネットワークを介して取得する際の遅延が問題になった

事例詳細はこちら 

クラウド移行への投資によって新しいテクノロジーを自社ビジネスに迅速に取り込むことができる一方で、クラウド移行後に明らかになったデメリットを減らすために、クラウドに限らず適材適所で使い分けていく取り組みへと進化しており、「脱クラウド」とも言われています。

これらのオンプレミス回帰事例の先にある本質的な要素は、大量で重要なデータを上手に扱うノウハウです。レベルは様々ですが、この点が、これからのビジネスの差別化につながっていくと考えられており、様々な企業が注力して取り組んでいる領域です。クラウド移行後に、この点に気が付いている組織・企業は、さらにクラウドへの知見を広げて、最適な活用方法を模索していくことでしょう。

4. オンプレミス回帰は、クラウド利用最適化への第一ステップ 

オンプレミス回帰をきっかけに、どんな種類のものが、クラウドに移行したほうが最適で、自社運用(オンプレミス)に戻したほうがいいか、経験則で判断しやすくなり、自社で活用するシステムの最適な棲み分けや使い分けがしやすくなります。

・クラウドとオンプレミス環境の棲み分け
・クラウドとオンプレミス環境の使い分け 

4-1. クラウドとオンプレミス環境の棲み分け

組織全体を俯瞰した際には、クラウドに移行したことで効率があがるものもあります。例えば、どんな業種や業務プロセスでも一般化できるもの、経費精算、経理システム、ファイル共有などのシステムは、今後もクラウドへシフトしていくでしょう。一方、オンプレミス(自社運用)に向いているものは、自社のビジネスに直結しているシステムといえます。例えば、生産管理や工業工程管理など、自社ノウハウが蓄積されるシステムです。

<適材適所での利用・展開イメージ>

パブリッククラウドとオンプレミス棲み分け

・クラウド上で運用したほうが効率的なもの
定型業務やプロセスが一般的なものはクラウド利用のメリットがあります。経理システム、経費精算サービスやファイル共有サービス等、様々なレベルでクラウド化は進んでいます。

総務省の調査*でも、企業でのクラウド活用は6割を超え、8割以上利用効果があったと答えています。

主なクラウドサービス利用の用途は、
ファイル保管・データ共有、電子メール、社内情報共有・ポータル、スケジュール共有、給与、財務会計、人事、データバックアップ、営業支援、取引先との情報共有、e-ラーニング、システム開発、ウェブサイト構築

* 出展: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/200529_1.pdf 

・自社運用のほうが何かと都合のよいもの 
自社のビジネスでの重要度の高いシステム、重要なノウハウが蓄積されているデータ、オンプレミスでの運用が適しているでしょう。製造業の生産管理や工程管理、製造データ、設計システムなど、ビジネスの根幹に係るシステムなどは、自社運用のほうが向いているといえます。また、データ保護に関しても十分注意する必要があります。

4-2.  クラウドとオンプレミス環境の使い分け 

自社運用のほうが効率がよい場合でも、クラウドとオンプレミスの両方の利点をうまく活用したい場合があります。このような活用方法をハイブリットクラウドといいます。 ハイブリッドクラウドのイメージ

ハイブリットクラウド環境での活用例では、BCP対策(災害対策)での活用が上げられます。
1拠点のみの会社・組織が災害対策を検討した場合、拠点が被災等で機能しない場合に備えて、2次バックアップデータの保管先の確保が課題になります。クラウドを2次バックアップデータ先として活用することで課題をクリアすることができます。

ハイブリッドクラウドの活用事例: 
ここでは、国際基督教大学によるクラウドを活用したBCP対策事例を紹介いたします。

クラウドを活用し単一キャンパスでもBCP対策(災害対策)の強化を実現した、国際基督教大学

国際基督教大学では、しっかりしたデータ保護対策を行ってきました。キャンパスは1拠点だったこともあり、災害時のデータの二次保管先や復旧対策などBCP対策に課題を抱えていました。ハイブリットクラウド環境を活用することでBCP対策を強化できました。オンプレミスでのデータバックアップとクラウドとの組合せによる活用を、より簡単に実現することに成功しています。

ハイブリットクラウドのバックアップ
Arcserve UDP Cloud Hybrid

国際基督教大学の事例:バックアップの延長感覚でクラウドによるBCP対策を実現

5. まとめ

オンプレミス回帰とは、パブリッククラウド上にあるアプリケーションやデータを、自社運用に移行するプロセスのことをいいます。また、クラウド移行後に判明しがちな4つのデメリット

・全体の運用コストが把握しづらい
・パフォーマンスの低下
・セキュリティレベルと管理
・自社ノウハウの蓄積 

上記4つのデメリットは、オンプレミス回帰の事例で、そのあたりの理由が理解できたかと思います。

クラウド移行後の気づきを通して、組織がシステム最適化のプロセスに移行していくことで、クラウドとオンプレミスでの適材適所での使い分けや、ハイブリットクラウド環境への取組みに進化してきています。まだまだ、クラウド環境とともにシステム環境は進化しているようです。

参考になれば、幸いです。

 

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